読む薬膳 シリーズその3『食薬効果の体感』

こんにちは、千葉です。暦の上では立冬を過ぎました。まだ秋は続きますが、夕暮れがだんだん早まっていく毎日に冬の足音を感じます。

さて、福島県南会津郡に大内宿という場所が有ります。山間部に有り、江戸時代の宿場町の町並みを両側約450メートルにわたって残している、福島県を代表する観光地のひとつで、そこに「ねぎそば」という名物料理が有ります。箸の代わりに、白い根元部分が少し曲がった長ネギを一本使って蕎麦を食べるのです。長ネギは箸でもあり薬味でもあり、蕎麦をすくいながら長ネキをかじります。思ったよりは辛くなくポリポリいけるのですが、早く食べすぎると「箸」が無くなってしまいます。

長ネギは通年を通して見かける野菜ですし、蕎麦の薬味としても常連さんですが、生の長ネギを一気に一本食べたのはその時が生まれて初めてでした。食後間も無く、お腹の内側から身体の外側へホカホカ温まってきます。通常の薬味の量程度では感じる事がない体感です。不思議な温かさで、なかなか悪くない感覚です。ご興味ある方は是非、自己責任で生長ネギ一本お試しください。しばらく息がネギ臭いです(笑)

薬膳では全ての食薬が「五気六味」の性質を持っているとされます。
◎五気  寒・涼・平・温・熱の5種類の寒熱に関する性質
◎六味  酸・苦・甘・辛・鹹・淡の6種類の味に関する性質
長ネギの五気六味は「温・辛」で、温性と辛さで身体を内側から温め、また発汗作用により、引き始めの風邪を治療する効用を持ちます。因みに「辛」には、①気を外へ発散させる ②身体中の気血をめぐらす という働きを持ってます。ここでは詳細には触れませんが、6種類の味それ自体にそれぞれ身体への効用が有ります。

長ネギの白い部分にはネギ独特の匂いの元でもあるアリシンという殺菌効果のある物質が、緑の部分にはフルクタンというインフルエンザ予防効果の有る物質がそれぞれ含まれます。また、体温が上がる事で免疫力も上がります。これらの相乗効果により、昔から長ネギには風邪対策効果が有ると言われてきたのでしょう。いかにもご利益有りそうなネギ独特の匂いと五臓六腑のホカホカ感を自分自身で体感すると、長ネギの生命を身体に取り込んで一体化することで元気になれた実感がしみじみと湧いてきます。

それでは皆様、旬の食材で季節を感じながら一日一日美味しく楽しくお過ごしください。

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